薄毛を気にし始めた多くの男性がまず最初に行うチェックはシャンプーの時や枕元に落ちている抜け毛の本数を数えることですが実はAGAの初期症状を見極める上で抜け毛の本数そのものはそれほど重要な指標ではありません。もちろん急激に数百本単位で抜けるような場合は円形脱毛症などの他の疾患を疑う必要がありますがAGAの進行はもっと静かで陰湿なプロセスを辿ります。AGAの本質は「髪が抜ける病気」というよりも「髪が育たなくなる病気」と表現した方が正確でありその最も顕著なサインは抜け毛の量ではなく「質の変化」に現れます。これを「軟毛化」と呼びます。正常なヘアサイクルであれば髪は数年かけて太く硬く成長し色が濃い「硬毛」となりますがAGAの影響を受けてヘアサイクルが短縮されると髪が十分に太くなる前に成長が止まり抜けてしまいます。その後に生えてくる髪もまた成長期が短いため以前よりも細く短く色の薄い毛にしかなれません。このようにしてかつては剛毛だった髪が徐々に産毛のような頼りない毛へと置き換わっていく現象こそが軟毛化です。初期の段階では本数自体は変わっていないにもかかわらず髪のボリュームが出なくなったり地肌が透けて見えたりするのはこのためです。抜け毛をチェックする際は本数よりも抜けた毛の状態を観察することが極めて重要です。もし抜けた毛が太くて長く毛根がしっかりとしているならそれは寿命を全うして抜けた自然な脱毛である可能性が高いですがもし抜けた毛の中に短くて細い毛や毛根が小さく萎縮している毛が多く混じっているならそれはAGAの危険信号です。まだ成長途中で抜けてしまった「志半ばの髪」が増えている証拠だからです。この軟毛化は徐々に進行するため毎日鏡を見ている自分自身では気づきにくいという厄介な特徴があります。気づいた時には既にかなりの割合の髪がミニチュア化しており治療を開始しても元の太さに戻すのに時間がかかることになります。多くの人が「最近抜け毛が増えた気がする」と相談に来ますが専門医がマイクロスコープで頭皮を見ると抜け毛の増加よりも残っている髪の中に細い毛が混在している状態すなわち軟毛化の進行具合を診断の根拠とします。AGAの恐怖は髪が突然なくなることではなく髪が徐々にその存在感を失い不可視化していくプロセスにあります。したがって対策を考えるならば床に落ちた髪の数を数えて一喜一憂するのではなく生えている髪のハリやコシ、そしてスタイリング時の手触りの変化に敏感になることが早期発見への近道となるのです。