髪が抜けるという現象は同じでも、AGA(男性型脱毛症)と円形脱毛症は、その発生メカニズムが全く異なる疾患です。AGAは主に男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が髪の成長サイクルを短縮させることで起こります。髪が細く短くなり、時間をかけて徐々に薄くなっていくのが特徴で、生え際や頭頂部から進行します。一方で、円形脱毛症は自分の免疫細胞が誤って毛根を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。ある日突然、コイン状に髪が抜け落ちるのが典型的な症状で、進行のスピードが非常に速いのが特徴です。AGAは遺伝やホルモンバランスが深く関与しているため、治療には内服薬によるホルモン制御が中心となりますが、円形脱毛症の場合は免疫抑制や炎症を抑えるステロイド治療などが検討されます。このように、原因が異なるため片方の治療法をもう片方に流用しても効果は期待できません。まずは自分の脱毛がどちらのタイプに属するのか、あるいは両方が併発しているのかを専門医に正しく診断してもらうことが、遠回りをしないための最善策となります。鏡を見たときに突然現れた「ハゲ」に動揺してしまう方は少なくありません。その際、それがAGAなのか円形脱毛症なのかを見分けるポイントは、抜け方と地肌の状態にあります。AGAの場合は、数年単位でゆっくりと薄毛が進行し、抜けた部位にも産毛が残っていることが多いのが特徴です。一方、円形脱毛症は境界線がはっきりしており、抜けた部分はツルツルとした地肌が見えることがよくあります。また、円形脱毛症はストレスが引き金になると言われることもありますが、実際には体調不良や疲労、あるいは原因不明の免疫異常で起こることも多い病気です。もし、抜け毛の周囲の髪を軽く引っ張って簡単に抜けるようであれば、それは円形脱毛症が進行しているサインかもしれません。このような場合は、自己判断で育毛剤を使用するのではなく、速やかに皮膚科を受診してください。円形脱毛症は早期に適切な治療を開始することで、比較的早く回復するケースも多いからです。焦って間違ったケアをせず、医学的なエビデンスに基づいたアプローチを選択することが、健やかな髪を取り戻す近道になります。